ほぼうさ’s diary

ロジカルオシレーターほぼうさのブログです

売れているバンドはなぜ売れているのか

ゲスの極み乙女の川谷くんが文春されたときに、非常にたくさんの人から不倫についてバッシングを受けていた。だが、実は彼らの音楽性については意外にも、肯定する意見が多かったのは気になっていた。特に、テレビのワイドショーでコメントをするだけの有名人たち (坂〇忍氏やヒ〇ミ氏) は、「彼の音楽は俺好きだっただけに残念だ」との印象的な言葉を残している。


しかし、ゲス川谷くんにどうしてそこまで人気があったのか、というと、これに答えるのは簡単ではない。正解は「人気があるバンドだから人気があった」という極めて自己言及的な、トートロジーでしか言いようがないのだ。


例えば、あなたが高校生だとして、同じクラスのおしゃれな男子シメジ君がゲスを聴いているらしい。そしてモテているらしい。一方、隣のクラスの、普段物静かだけど美人でおしゃれな女子エノキちゃんもゲスを聴いている。そういうことなら、あなたもゲスを積極的に聴く、あるいは聴いていることにするのではないだろうか。


「誰かが買うからぼくも買う」-このトートロジーは、じつは経済学の中では「ケインズの美人選挙」と呼ばれている。本当に、素質として1000人に1人くらいの希少性をもつ美人が美人投票で優勝するのではない。たとえ平凡な見た目でも、みんなが、あるいは他の誰かが、この娘が美人だと思い投票するだろうから、きっと票が集中しそうな気がするので、ぼくも投票しよう…この結果、美人投票では1000人に1人の娘をさしおいて、平凡な娘が優勝してしまうのだ。


この行動原則、一般的には「投機」と呼ばれている。

投機と言われると、ふつうは株式投資やFX、デリバティブのように、投資によってギャンブル的にお金を稼ぐことを指すので、そういうのは特殊なことだし、なんとなく音楽の趣向などとは無関係なように感じる。でもそうではないのだ。投機こそ、人間の中に本来備わっている、普遍的な活動そのものなのだ。


それはお金を使うタイミング―つまり貯金と消費について考えるとたやすく理解できるだろう。人は入ってきたお金をいきなり使い切ることをしない。将来のリスクを考え、貯蓄の形で一時的に蓄えておく。しかし、大きな買い物をするとき、人が決断するきっかけを与えてくれるのは、実はまわりを見渡して、他の一般的な人だったらこうするんじゃないかな?、というタイミングで決めているのではないか?
「嫁も子供もできて、やっぱり今がローンを組んで家を買う時期かな」
「車検のこととか考えると、いま車を下取りに出して新車を買うタイミングだな」
上の例はどちらも、原資をたくわえ、頃合いを見計らって投資をする。この行動パターンがいったい投機でなくて何というのだろう。つまり、人間はあらゆる行動について、投機的な判断で行動しているといっても過言ではないのだ。


最初の例に戻ろう。時として、音楽の趣味―とくにポップスなどの流行歌においては、このような投機的判断が紛れ込むことがある。それは、まさに坂〇忍氏やヒ〇ミ氏が「ゲスの音楽評価してわかってる感出てる俺オシャレでカッケー的なことになりたい」と欲望するがゆえである。彼らはもちろん、本当に音楽性を理解して評価を与えているのではない。「ほかに評価を与えているおしゃれな若者」がいるから、追随して評価しているのである。


これは特殊な一例ではなく、どうも一般化できそうだ。そう、売れているバンドはなぜ売れているのか。それは、売れているから売れているのである。言い方を変えれば、投機的な投資対象になることができたから、である。ただそれだけである。そこに、高尚かつ深淵な音楽性や芸術性を見ようとするから、人は判断を誤りつづけるのだ。